観音下町は大倉岳高原スキー場の手前5kmくらいの所にあり、私が小学生だった昭和50年代には『観音下石:日華石』という、小松では住宅の基礎や塀に珍重された素敵な石が採石されていました。
集落は95パーセントが緑に囲まれており、集落の中央に流れる小川には清流に住むアマゴ、ゴリなどが生息。もちろんクマやタヌキ、イタチにテンといった野生動物の宝庫です。
高校2年当時に私がひと夏を愛犬と過ごすためにキャンプ地を探したのはその美しい川の上流です。川といっても広いところでも幅2m位の小さな支流です。しかし、集落のはずれから上流まで林道を歩くと約30分かかります。
私は渓流釣りが得意で、どのあたりに、どんな魚が潜んでいるかなどは小学生の頃から知っていました。なのでキャンプをする場所を見つけるのには正直言うと随分迷ったのです。悩んだ挙句に決めたのは、川幅が2m位あり、川べりの片方は広い砂利&草むら、もう片方は切り立った崖のところです。砂利側にはカマドをつくり、崖側にはちょうど上手い具合に自生していた木から太いワイヤーを2本たらし、太くて長い木を使って長さ4m位のブランコを作る。そして、そのブランコに木を渡し、板を貼り、ちょうど川の上に畳4枚分位の住居スペースを作ろうとしました。
父が川の上に板を張るまでの工程を手伝ってくれました。私たちは腰に鉈(なた:山で植物のツルや小木を切り払う道具)頭に手拭いを巻いての作業です。ちなみに材木のほとんどは冬に倒れた倒木を利用。そして、作業した日曜日の夕方には、私とエルが夏休みの間過ごすキャンプ地の下地が完成したのです。
完成した『川の上のキャンプ地』し父と二人あぐらをかいて座ると、一陣の風が吹き、何とも言えない充実感を感じたのを覚えています。とともに、もうすぐ始まる未知の時間に胸が高まりました。

1986年 夏
山深い渓流に手作りのキャンプ地を作った。
次回はそこでの『犬との暮らしぶり』をご紹介します。