
山でのテント生活は快適でした。
日中は木陰で涼しく、夜は谷を吹き抜ける風が寒いくらいでした。
寂しくないの? いやいや、全然。ほぼ毎日友人が遊びに来ていましたので。

山では『ナイフ』『火』『釣り=狩猟』と男が好む3つが常用のもので、遊びに来る友人たちは皆喜んで遊んでいました。自分で釣った魚をナイフでさばいて、焚火で焼いて食べる。箸は木の枝を削って作る。雨の日用にガスコンロは置いてありましたが、食事はほぼ焚火で作りました。
焚火というのはイイ!。山ではラジオやテレビはもちろんないのでヒマなんじゃないの?と思われるようですが、焚火の火を見ているだけで時間はあっという間に過ぎます。
それでいて、とっても静か。焚火を眺め、燃え盛る炎の先にまだ見ぬ未来を想像し、胸を躍らせていました。なんせ10代ですからネエ、若かったワ。

当然腹も減ります。今でもあの時の味に勝るものはない!と断言できるのは、友人のお父さんが持ってきてくれたジャガイモです。谷川の水でコトコトとゆでて、粗塩をパパッとかけてアツアツのやつを頬張る。お旅のジャガバターの100倍うまかった。エルも大好きで、キャンプしていた1カ月で米袋一杯のジャガイモを食べました。皮はそのままの方が最高!!
キャンプ地に友人たちはバイクで来ていました。50ccのスクーターです。
あんな小さなタイヤで砂利の林道を走るのはなかなかのテクニックを要します。私はときどき、父のスーパーカブを愛用していました。スーパーカブはタイヤが大きくトルクも十分だったのでガタガタ道もなんのその。父にはヘルメットをかぶるよう叱られましたが、ほとんどは手ぬぐいを巻いて疾走していました。しかしカブはさすが世界に誇れる名車!。一度も給油なしでひと夏を過ごせました。
これに酒とタバコが入れば完璧だったんですが、純情な私たちは不思議とその両者をやりませんでした。よく考えたら皆バリバリの運動部でしたから、体は大切にしていました。
エルはもともと臆病な犬でつないでいるときは家族以外になつくこともなく、むやみに触ると噛みつく犬でした。しかし、キャンプ地に訪れる友人たちには寛容で「あら、いらっしゃい」というような歓迎ぶりだったのがおもしろかったナ~
よくみんなで騒いでいた時も一緒に輪に参加していました。