初めて参加した野生ニホンザルの調査は今でもよく覚えています。
「広大な山の中で野生のサルなんて見つかるのだろうか?」とも思いましたが、S先輩と一緒に山に入って感激しました。先輩はまず山の入り口の集落のいくつかの民家を訪ね、「最近サルをみましたか?」と聞き込みをし、集落にある畑への出没状況を調べました。その後、宿泊地となる場所まで山間の林道を歩くのですが、ただ歩くのではなく道端の糞や植物に残る動物の痕跡を記録し、常に山の斜面の様子(鳴き声やサルが木を揺らすこともある)を観察します。そして、早ければテント場に到着するまでにサルの群れを発見してしまいました。野生動物のことを聞くと何でも答えてくれるので私は心から尊敬しています。さて、テント場に到着するまでに手がかりがなかった場合は、調査員は地形図をもとに山中を双眼鏡、コンパス、トランシーバーを持って調査します。ここでいう山とは白山のような標高の高い山ではなく、1000m以下の里山です。ただ地形図をちゃんと読めないと当然迷ってしまい、遭難となります。遭難しないとしても自分がどこにいるのか分からないようでは調査になりません。ですから新入部員は先輩から一人歩きの免許皆伝がないと一人では山を歩かせてはもらえません。私は地形図を見ながら自由に山中を歩く先輩にあこがれ、学校の授業そっちのけで山に通いました。おかげで1年の部員の中ではだれよりも早く免許皆伝してもらいました。
山での調査風景
現在の自分の位置、サルの位置を仲間にトランシーバーを使って交信する
