5年生になったとき、卒業論文のテーマに「野生タヌキのライム病抗体保有状況」というテーマを選び、神奈川県立自然保護センターから検体を提供いただけることになりました。神奈川自然保護センターでは傷ついた野生鳥獣を保護収容し、治療とリハビリを行い野生復帰させていました。しかし、中には助からない動物もおり、私はその中からタヌキの死体をもらい、血液の分析や解剖を行う予定でした。もしセンターでタヌキの死体が発生した場合は研究室のFAXに連絡を頂き車で回収に行く。第1報は約束してまもなく入りました。私は実習をそこそこにこなし、2時間かかるセンターに行って「これです」と言われたタヌキを見てビックリ。私が見せられたタヌキは瀕死の状態であり生きていました!。担当のSさんは「助けてやってよ〜獣医の卵なんでしょう?!」 正直言ってこの言葉には面食らいました。すぐに研究室のH先生に連絡をとり応急処置方法を習って実践し、大学に550ccの軽をぶっ飛ばして帰りました。検査の結果、タヌキは交通事故によって膀胱破裂を起こしており教授の手術によって一命を取り留めました。ほっとした安堵感と獣医の学生なのに動物の治療が何もできない自分がとても情けなく思った出来事でした。と同時に、この日を境に「野生動物の救護」という分野にのめり込んでいったのです。
保護されたタヌキ 治療を終えこれから野生復帰のトレーニングを行う
