コナンは1歳の誕生日を獣医大学で迎えました。
野生復帰については結果的には「不可能」と判断し、その後について教授、S先輩、ニホンザルの研究者のIさんと幾度も論議が行われました。そのときの選択肢は以下の3つ
①実験動物として研究機関に譲渡
②安楽死
③動物園など、生涯にわたって飼育可能な施設に譲渡
怖いもの知らずの私は、選択肢にはない「自宅で飼育」を主張。ところが、その時に教授のカミナリが、「お前にサルの何が分かるんだ! バカヤロウ 」という一言と一緒にドカン。
この雷に場内はシーンと沈みかえり、結局ここまで世話をした私が①から③のどれかを選ぶことで皆が合意した。①②は当然避けるとして③となるとまったくあてがない。
動物園はどこもニホンザルは満杯状態というし、群れになじめずにいじめられるのも困るし・・・。
悶々とした日々がしばらく過ぎたころ、図書館である1冊の本を見つけました。それは周防猿回しの会の創設者の話で、日本古来の猿回しの芸の厳しさや難しさ、素晴らしさをつづったものでした。「もうここしかない!」というのが本を読み終えた感想で、さっそく教授に相談したところ、以外にも「相談してみましょう」とのことであった。教授はニホンザルに関しては日本を代表する研究者なので周防猿回しの会にも当然顔が利き、事は順調にすすみ、コナンは「モトム」という名前に変わる予定で無事会に引き取ってもらうことになりました。
そして、初夏の日差しがまぶしいある晴れた日に、コナンはワンボックスに乗せられ私の元から去りました。手放した寂しさと、引き取ってもらった安堵感が複雑に絡み、しばらくは放心状態が続きました。
大学のグランドでボール遊びをするコナン
願わくは日本を代表する回し猿になってほしい。
