「最近脱毛が進んでいて、トリミングショップで受診をすすめられて・・・」とわんちゃんが来院。皮膚には赤くなる。発疹といったような炎症は見られないのに、毛が薄くなっていました。
全身検査で右の精巣が陰嚢にな、くペニスの横にとどまるいわゆる潜在精巣(写真)で、

左の精巣の3倍の大きさでした。飼い主さんによると最近急に大きくなったとのこと。
精巣にも悪性腫瘍があることから早急に手術になりました。
実際に精巣を確認するとやはり異常に大きくなっていました。(写真)

術後の病理検査で『悪性セルトリ細胞腫』と分かり、飼い主さんともども胸をなでおろしました。
皮膚炎を伴わない急な脱毛もこの腫瘍の特性のひとつです。
転移する可能性の低い腫瘍ですが、今後の継続的な検診が必要です。
セルトリ細胞腫をはじめとする精巣の腫瘍は、潜在精巣の場合の発生率が正常な位置に睾丸がある場合に比べやはり高いとのことです。
これは、潜在精巣の状態では陰嚢(たまぶくろ)に精巣が入っていない場合に比べ温度の影響を受けやすいためといわれています。陰嚢にはシワがあり伸びたり縮んだりして体表面を調整することで精巣の温度を一定に保てますが、皮下や体内に精巣がある潜在精巣ではそれができないというわけです。
あと、精巣自体がなければ腫瘍にもならないことから、やはり、去勢が発生予防の第一選択ともいえるでしょう。