ワンちゃんが、座った格好でおしりをこすって歩くことがあります。
そんなときは肛門のちょうど斜め下(時計でいうと4時と8時のあたり)、肛門括約筋の下にある肛門嚢という匂い袋が炎症を起こしている場合があります。
通常はウンチを出す時に、または、興奮した時に嚢内の液が排出されるのですが、嚢内に細菌などが入り炎症をおこしたりすると大変、ワンちゃんは排便のたびに痛がることになり、運悪く嚢が破裂すると大惨事になります。
そのようなときの分泌液は正常時の黄色から血様もしくは泥状に変化します。
さらに、嚢と肛門をつなぐ管が細くなってしまったり、薬を飲んでも症状が緩和されない場合は、肛門嚢をとりだす手術を行うことになります。
今回のわんちゃんは約1年肛門嚢を患い、投薬でも改善が見られず手術を行いました。

手術は問題となる肛門嚢を切除する術式です。
写真の中央の黒い部分が肛門で両脇の青丸のところあたりに肛門嚢があります。
肛門嚢は筋肉と脂肪に囲まれた所にあります。
手術の時に嚢が分かりやすくするためあらかじめ嚢内に注入後固まる医療用のゲル剤(下の写真)
をいれます。

右の写真の青丸はゲルを注入して膨らんだ肛門嚢です
肛門の周囲は血管が非常に多くあります。手術は出血を最小限に留めるため、細心の注意をはらいながら電気メスで細かな止血をしながら、慎重に行います。

写真は取り出した肛門嚢です。
左の緑色のボールは注入したゲルです。
嚢の内面が黒く炎症を起こしているのが分かります
肛門嚢液は大変強烈なにおいで、動物のマーキング、すなわち縄張り表示の目印に使われるものですが、飼い犬であれば匂い付けは必要ないので、嚢を切除してしまっても身体上は問題がありません。