「オシッコの出方が不安定で、ときどき血が混じるんです・・・・」とのこと。
尿の検査ですぐに尿結石が原因と分かりました。
下の写真の中央の〇の中の物質はシュウ酸カルシウム結晶という尿結石成分の一種です。

これらが集まって結石を膀胱内で作ると膀胱内でゴロゴロと動き回り膀胱内膜を傷つけ血尿なります(オシッコが出ない!(膀胱結石)参照)。
今回の場合は膀胱結石ではなく、尿道内に小結石が癒着して取れない状態でした。
つまり、尿道自体が狭くなり、オシッコがうまく出せなかったわけです。
犬のペニスには陰茎骨という骨があり、尿道はその中を通っています。ですから、尿道を切開して結石を取りのぞくことはたいへん困難です。この場合、ペニスの先からビニール製のチューブを入れて、注射筒で水圧をかけ、膀胱内に結石を押しやり、膀胱切開を行って結石を取り出します。
ただ、今回のように結石が尿道に癒着してしまった場合は、オシッコの出口を他の場所に造る『尿道瘻造成術』という手術を行います。

左図ではワンちゃんは仰向きに寝ています。〇は陰嚢、実線はおおよそのペニスの位置を表します。点線は尿道で×は閉塞部分です。今回はちょうど陰嚢部の尿道を開いて人工的な尿道口を造ります。

術後の写真です。〇の中に見えるのが尿道粘膜面で←は尿道の出口です。
オシッコはここから出ます。
とても勢いよくスッキリと出るので、ワンちゃんが随分楽そうになったとのことです。
なお、シュウ酸カルシウム結晶はストロバイトと結晶と異なり、PHを調節するタイプのフードでは発生が抑えられないこともあります。
そのような場合はフードメーカから出ている数種のフードを試し、発生を抑えるような治療が必要です。
膀胱結石や尿道結石は耐え難く痛い病気ですので、予防することが第一。少しでも排尿時に出血が見られたり、オシッコの回数が増えてきたなどの症状がみられた場合は受診してくださるようお願いします。
特に冬場の寒い時期に発生しやすいので注意が必要ですよ。