一年以上下痢が続いているワンちゃんが来院。
今年で9歳になり未去勢とのこと。
お腹の触診をしてみると、下腹部にこぶし大の固いものがあるようなので『もしや?』と思い、レントゲンを撮りました。

これはワンちゃんを横から見た写真(右がおしり)で、中央にボヤ〜と白く見えるのが膀胱です(造影剤を入れてあるため白く見えます)。本来なら下の写真のようにもっと骨盤の骨に近い所にあるはず(黒くボヤ〜と映っている)なのに、この子の場合は本来の場所よりもかなり前方に押し出されています。
つまり、膀胱の付け根にある『前立腺』がこぶし大に腫脹し、膀胱を前方に押し出したのです。肥大した前立腺の影響でウンチのたまり場である大腸が圧迫され、ウンチが細く、下痢状になったと思われます。
では、治療に入ります。
前立腺は性腺ホルモンの支配下にあるので、治療は『去勢手術』になります。

この子の場合は、9歳と高齢なので全身麻酔による影響が心配です。幸い検査では異常が認められず、普段どうりに手術は終わりました。
ただ、去勢したからといって急に状態が改善せず、4週間ほどは影響が残ると予想されます。
それまでは、かわいそうですが、下痢が続くでしょう。
このような事態を未然に避けるためにも、やはり去勢は早期に行うほうがよいですね